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になるかも知れない。なぜなら、この制度上の権限問題というのは、潜在的法資源の配分であり、さらにいえば法資源の配分は<立法権限の配分>を含むものであり、その考え方は連邦制の国ではむしろ当然である。<立法権限の配分>が実質的に自治体にないために、対等という実感が生まれてこないのかもしれない。このように勧告の大意を解釈すれば、そこでイメージされている分権型社会と連邦制とは紙一重の差でしかない。
分権型社会の実現を目指す変革の過程においては、システムの変革のみならず慣れ親しんできた発想の転換を要求することから、この一重の差が大きいことはいうまでもない。とはいえ、連邦制でない日本のような単一制の政治システムでも、<立法権限の配分>に理論的あるいは憲法理念的な素地があることを考えれば、国と自治体および都道府県と市町村という異なるレベルの政府間関係でも対等な関係であり、その意味ではあらゆる政府間関係は水平的関係になるという構想を勧告は持っていることになる。
しかし、分権推進委員会の現状認識は、国と都道府県はいうまでもなく都道府県と市町村の関係は、制度運営の上では垂直的な政府間関係であるとしている。この垂直的政府間関係が同委員会の想定する分権型社会における水平的政府間関係(政府間の契約・協約の締結による対等な関係)へと転化するには、様々な紆余曲折があると予想される。にもかかわらず、同委員会は地方分権の名宛人あるいは受け入れ先が何をすべきなのかを具体的にはうち出していない。むしろ権限の配分先よりも集権構造そのものにメスを入れようとしている。第1次勧告では「地方公共団体における行政体制等の整備」という章を設け、都道府県と市町村との新しい関係、および、行政体制の整備と国の支援を唱ってはいるが、<立法権限の配分>という本格的な制度改革を行うには地方自治法の改正を伴うことにならざるを得ないし、その方向での検討は始まったばかりである。
その限りでは、立法権限の配分にもとづく立法権限行使の実体化は、自治体に預けられた格好になっている。こうした水平的な政府間関係を確立するために、分権変革に向けた多様な試みが、自治体の自主性と<国の支援>のもとでおこなわれようとしている。本稿の課題は、こうした中で自治体レベルにおける水平的政府間関係確立の<実験>を観察し、分権達成を目指す制度活用の方向性あるいは枠組みを探ろうとすることにある。ただ、地方分権の受け皿作りのために短絡的に合併や中核市・広域連合への移行が<必要>だとするのはおそらく誤りであろう。なぜなら、<公共サービス>の受け手であり提供者でもある市民にとっては、自己決定・責任に見合うだけの制度整備がされればよいのであって、行政能率からのみ地域をくくることは必ずしも必要ないからである。換言すれば、1つの

 

 

 

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